対するエノキドは、蹴りを主軸とするファイター。ポケットに手を入れたまま、鋭い蹴りを繰り出すそのスタイルは、攻防一体。加えて、驚異的なタフネスとスタミナ。雑魚のパンチなどまるで蚊に刺されたように受け流し、最後は強力な蹴りで敵を沈める。

お互いが相反する強さを持つ。だからこそ未だ二人の戦いには決着がつかなかった。

──まずはクオンが動いた。鋭いストレートがエノキドの顔面を狙う。だが、わずかに反らし、エノキドはそれをかわす。すかさず、エノキドの蹴りがクオンの腹部を襲う。しかし、クオンは身体をひねって回避。見切っている。

しかし連撃。エノキドのハイ、ローのコンビネーションにクオンの体勢が崩れる。畳みかけるように、エノキドが顔面への蹴りを放つ。クオンはのけぞりながらかわし、カウンターの右拳を振り下ろす。拳はエノキドの頭部にヒットする。だが、手応えはまるで岩のように固い。

拳の痛みを二度、三度と振り払う。

「……このままじゃ埒があかねぇな」

クオンはひとつ、制服の胸元のボタンを外す。エノキドもポケットから手を出し、両腕をぶらりと垂らした。

ひゅっ、と風を切る音と同時に、クオンの右腕に鈍い痛みが走る。

(今のは何だ!? 見えなかった!)動体視力に自信があるクオンですら見切れないエノキドの蹴りだ。その強靭な肉体から繰り出される蹴りの正確さとスピードにクオンは驚愕する。

「行くぞ!」そう叫んだエノキドの表情が変わる。冷静さが一変、怒りのエネルギーが放出された。まるで鎌鼬(かまいたち)のような蹴りが風を裂いて襲いかかる。クオンも回避のギアを一段上げて対応するが、それでも見切るには時間が足りない。

連撃、連撃、連撃──。空振りしても気にしない。並の人間ではできないことだが、無尽蔵のスタミナを持つエノキドにはそれができる。

(このままでは持たない!)と、クオンは冷静に判断する。神社前の広い空間では、蹴りを最大限に生かせるエノキドが圧倒的に有利だ。それならば。

クオンはフェイントを一閃、エノキドの顔を狙うと、拳の勢いのままに、そこから一気に駆け出した。森の中へと。

 

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