俳句・短歌 短歌 自由律 2020.10.10 句集「愛のままで咲く」より三句 愛のままで咲く 【第11回】 馬場 美那子 “こぼれる愛 からめた指の すき間から” 十七音に込められた、愛と感謝の川柳句集 母へ、恋しい君へ、愛犬へ、かけがえのない日常へ。やさしく、時に激しい愛の詩。 5章からなる川柳句集を連載にてお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 血に染まる君の心のトゲ抜けば 人ギライ君のおかげで治ったわ どこをどう突いても君が離れゆく
小説 『アイアムハウス』 【新連載】 由野 寿和 静岡県一家三人殺害事件発生。その家はまるで息をするかのように、いや怒っているかのように、大きく立ちはだかり悠然としていた 午前十一時。サイレンを鳴らさず、車両は静岡県藤市十燈荘(じゅっとうそう)に到着した。静岡中央市にある県警本部から十燈荘までは、藤湖をぐるっと大回りして藤市経由でトンネルを通り、小山を登ることになる。藤湖を見下ろす高級住宅街、十燈荘は、土曜の昼だが活気はない。既に外部への交通規制が敷かれているとはいえ、不気味に静まり返っている。ここで殺人事件があったことを、住民達が知っている気配はなかった。その家…
小説 『標本室の男』 【第38回】 均埜 権兵衛 少女を抱きかかえたまま、ふらふらと藪の中へ泳ぎ出す骸骨。少女にきゅっと抱き着かれると、尻餅をついてしまい… 骸骨はおずおずと肩に右腕を回した。間近に少女の顔が迫り、しなやかな感触が腕に伝わってきた。何だかいい香りがして、頭の中で早鐘が鳴った。骸骨は目を瞑るとエイッとばかりにその肩を押し出した。「きゃっ」小さな悲鳴が上がり少女は前へつんのめった。周章てた骸骨は左手で支えようとしたのだが、宙に差し伸べられた彼女の腕の下に滑りこむ形となってしまった。腕が胸のふくらみに触れ、一瞬ドキッとした。だが何とか転倒だ…