その眼鏡をかけた男性に追従するように、彬も入室した。白髪交じりでパーマをかけた男性面接官を挟むように、両脇に一人ずつ男性が座っていた。

テーブルで向かい合わせた三人の面接官から五、六問ほど質問され、面接は十分程度で終了したが、彬は何を質問され、何と回答したか、全く覚えていなかった。

面接後、別室で筆記試験があったが、落ちることを前提に受けた面接だったため、彬は故意に半分程度しか解答欄を埋めずに提出し退出した。

しかし、一週間後、彬の思惑とは反対に、採用通知が届いた。

(あの二人に謀られたか?)

郵送されてきた通知を開き、結果を見て、彬はそのように確信した。そうでなければ、面接での憮然とした振る舞いや、筆記試験の出来で採用になるわけがなかった。

結局、採用を断り学長や教授の面子を潰すわけにもいかず、彬は黙ってこの採用通知を受け入れることにした。

(いいところで退職しよう)

数日経って、彬は打ち合わせのため、再び北上市へと向かった。

(十一時からの予定だから、おそらく昼過ぎには終わるだろう。四月からの居住先も探さないと)

彬は、その日の宿泊代を節約するために、日帰りで仙台に帰ると決めていた。不動産屋が開いている時間を考え逆算すると、家探しができるのは三、四時間くらいしかない。そのように考えているうちに、彬は校長室へと案内された。

彬は、白髪交じりのパーマの面接官が校長の野間であったことをこの時初めて知った。

「いやぁ、ようこそ。とりあえず、先に隣の職員室まで付いてきてくれ」

大きな声を張り上げながら野間は、廊下を出ずに、校長室と職員室が直接つながっているドアのノブを引いて、彬を手招きしながら職員室へ移動した。

躍動したように大きく両腕を振って足音を立てて歩く野間の二、三歩後ろを彬は付いて歩いた。

「皆さん、四月から福祉介護科の教員として採用することになった藤井彬先生です」

仕事の手を止め一斉に振り向き、その場で直立する教員達に向かって、野間が声高らかに紹介した後、彬に挨拶をするように促した。

「仙台市から参りました藤井彬と申します。四月からよろしくお願いします」と、簡単に挨拶をし、緊張した面持ちで深々と一礼した。その後、野間は、校長室に戻る前に二人の教員を呼び寄せ、彬にその二人を紹介した。