【前回記事を読む】18時を過ぎても、彼は体育館で1人考え込んでいた――2週間前、校長から「誰も退学させるな」と内密に命令された

前日

「十時からの面接で仙台から参りました藤井と申します」

受付で挨拶を済ませると、彬は受付の女性に控え室へと案内された。春一番の隙間風が廊下の窓から入り込み、ドアを小刻みに振動させていた。改めて見ると、白い壁は漆喰が剥がれかかっており校舎の至る所が老朽化している。中庭の草木もそれに比例して朽ち果てているように乱雑に生えている。八階建ての鉄骨鉄筋コンクリート造の大学院キャンパスとは対照的だ。

そう思いながら歩いているうちに、控え室に到着した。

「こちらの部屋でお待ち下さい」

受付の女性がそのように一言言うと、そのままその場を立ち去った。彬が受付の女性が導いたその部屋のドアの扉を開けると、同じく面接を受ける予定と思われる同じ年頃の眼鏡をかけた男性が椅子に着席していた。

軽くその男性に会釈をして、彬は空いている隣の席に座り、会話をすることもなく、時間が来るのを静かに待った。

(早く帰りたいなあ)

卒業後の新生活に向けて大事な時間を無駄にしたくないと考えていた彬は、繁雑なことは極力最小限に抑え、部屋の整理整頓のため、一刻も早く仙台市に帰りたかった。

「二人一緒に、こちらへどうぞ」

彬がそのような気持ちとはつゆ知らず、先ほどの受付の女性が面接会場へと案内した。

「失礼します」