【前回の記事を読む】初めての歯科でいきなり「歯石を取ってください」はかなり危ない!? 虫歯・歯周病を本気で予防したいなら、歯石除去ではなく…

第1章 保険診療はベストな医療ではないという問題

1 歯磨き指導もなしにいきなり歯石除去はされるべきではない

歯石が溜まっていたら衛生上不潔なのでこれをすぐに除去したいという患者さんのお気持ちは十分理解できますが間違いと断定する理由は歯と歯肉を傷つけダメージを与えることは明白だからです。

こんなことを繰り返していたら歯はえぐられ、歯肉は退縮し根面が露出しお水、風にしみたり、お湯にしみたり大変なことが起こってしまいます。

例えば、車を洗車する時に車の塗装を痛めないように手洗いにして気を使うと思います。洗顔をするときには洗顔料を泡立てゴシゴシせずに皮膚を綺麗に洗うと思います。また、夏の強烈な日差しは、さらされると肌が老化、劣化しアンチエイジングには最悪です。繊細なお手入れが必要なことは多くあります。歯石除去も同様でやり方、ひん度、やりすぎには注意が必要です。

クリティカルプロービングデプスいう歯周病学の論文です。歯周ポケット2.9ミリ以下を歯石除去すると歯肉が退縮するという記述があります。

歯周外科の場合は4.2mm以下を処置すると歯肉が退縮するととらえられます。それではどうして「半年に一回は歯科に行って歯石を取ってもらう」という歯を破壊するような都市伝説が生まれ一般の方に信じられているのでしょうか。

その理由は保険診療の仕組み、構造にあると私は考えています。医師・歯科医師が保険診療を行う際には健康保険法に定められた約束事があり、それを遵守しなければなりません。そのルールから少しでも逸脱したものは認められず請求したレセプトは返戻、却下され、その結果歯科医院には金額が振り込まれません。

健康保険のルールでは歯周病の病名があれば初診時の歯周検査をして管理料を算定し、歯石除去(スケーリング)を行うという流れになっていて、歯周検査、歯石除去は一連の流れになって請求出来る仕組みになっています。そこに今後の治療のオリエンテーション・コンサルティングをして患者さんの病気の原因を探ろうとして予防の時間を取ろうと思っても保険点数がありません。

ここでいう治療前のコンサルティングとは「なぜ虫歯になるのか?なぜ歯周病になるのか?」そこにいらっしゃる患者さんに今までの歯科受診の仕方と過去と現在の生活習慣をお聞きし、何故今の問題が起こっているのかを特定することです。

例えば「前の歯科医院で歯磨き指導は何分、何回位行われましたか?」「歯間ブラシ、デンタルフロスの使い方の指導は行われましたか?」「甘いものはお好きですか?」ほとんどの歯科ではこのような治療を始める前のオリエンテーションはありません。やればやるだけ、保険では赤字になることが理由です。残念で仕方ありません。

病気の原因を詳細に1時間以上も説明をしても保険診療ではゼロ円しか請求出来ないという結果が待っています。やったかやらないか証拠が残らない予防歯科、コンサルティングに点数を一律につけることが出来ないのでしょう。これが日本の歯科保険診療の最大の弱点です。

歯科医師も慈善事業ではありませんのでこれでは歯科医院を経営出来ません。そのため保険診療では手っ取り早く「半年に一度歯石を取りましょう」と言うのです。これは相当患者さんにとってはマイナスとなります。

歯石除去は口腔衛生指導後に行うことに意味があり、正しいことを正しく患者さんに伝え実行することが何より必要に思います。