【前回の記事を読む】言葉が一切通じない教室で、アフリカの少女が描いた「木」の絵。私はなぜか、その意味を“完全に理解”してしまい……
Module1 「自分らしい自分」を見失ってしまった時代 あなたのせいじゃない
デジタル時代のコミュニケーション
SNS やメールなど便利なツールのおかげで、相手の表情を見ることもなく、伝えづらい気持ちや、謝罪の気持ちも素直に伝えることができるようになりました。自分の伝えたい気持ちや感情も、スタンプや絵文字を使って表現できるようになり、すれ違いの生活の中でも、それぞれが自分の好きなタイミングで自分の想いを伝えることができるようになりました。
最近の親子が仲良しなのはSNS のおかげかもしれないと感謝することもあります。私もその親の一人です。少し軽いような、表面的なコミュニケーションのようにも感じることがありますが、対面で伝えづらかった言葉が素直に届けられるようになったメリットは大きいと思います。
しかし、「面倒で厄介だった対面でのコミュニケーション」が「便利で楽なコミュニケーション」へと変化した一方で、私たちの生活のさまざまな場面に新たな課題も生んでいます。
例えば、上司の表情や感情を想像することなく、説教も聞かずに退職を申し出ることもできたり、恋人の切なく悲しげな表情に心を痛めることなく、別れ話ができたり、極端な場合、嫌いな人や都合の悪い人、会いたくない人ができれば、その相手をブロックし、まるでコミュニケーションそのものが無かったかのようにリセットすることさえできるようになってしまいました。
数年前、海外の友人から日本発の「Emoji」がいかに画期的で素晴らしいかを伝えられました。「日本人の絵文字は文字だけでは伝わらない大切な感情や言葉の真意を表現する方法を発明している! すごい!」と感心されたのを覚えています。
その時は誇らしく思ったものですが、今振り返ると、この会話には深刻な意味が隠されていたのかもしれません。
それは、メールやチャットでは、声のトーン、表情、ジェスチャーといった非言語的な要素が完全に失われ、相手がどんな気持ちで伝えようとしているのかが分からなくなっているということです。
さらに、無意識に出てしまうかもしれない自分の表情を隠し、絵文字を使って表面的な、偽りの笑顔を届けることもできるのです。顔の表情や声色を見て、相手を察するという時間を奪われてしまった現代人は、送られてきた文章や絵文字で相手の気持ちを受け止め、相手の本当の感情や気持ちを想像する機会をどんどん失っていっているのです。