【前回の記事を読む】「私たちの仲の良さも負けてない」と、私の腕に自分の腕を絡めてきて…リードするように動き出し…

第一話 出会い 

莉央に腕組みをすると「五時間目歴史だよね。絶対眠くなるやつだ……」と誤魔化しながら、海斗たちと一緒に食堂の出口に向かって歩き出した。

食堂から出てすぐに、忘れ物をしたことに気が付く。

「あー、水筒忘れてきちゃった。先に行ってて!」

食堂へ引き返し、食事をした辺りの椅子を覗くとポツンと水筒が置いてある。

「あった」。

水筒を鞄に入れ、莉央たちに追い付こうと歩き出すと後ろから声を掛けられた。

 

「おい」

 

振り向くとそこには、さっき目が合った軽音部の川端律音(かわばたりつと)が立っていた。

間近で見る律音は端正な顔立ちで、少し長めの茶色い髪。流行りのセンターパートがよく似合っていた。整髪料か、あるいは香水なのか、ほのかに柑橘系の香りがする。

「さっき俺と目が合ったよな?」

「あ、すみません」

つい律音に見とれてしまった私は、突然話しかけられ咄嗟に謝った。

「別に謝らなくていいけど、なんか反応しろよ」

ブレザーのポケットに手を入れながら、明らかに動揺している私を見てにやけている。

返答に困って立ち尽くしていると、律音は軽音部の仲間に声を掛けられ「じゃあな」と言ってその場から去って行く。

それと同時に五時間目の始業チャイムが鳴り、慌てて教室に向かって走り出す。

どことなくカリスマ性を感じさせる四人が揃って歩くと、誰もが振り返り、まるで色鮮やかな花畑に蝶が蜜を吸いにくるように、彼らの周りにはいつも人が集まっていた。

気が付くと私も無意識に律音を目で追うようになり、次第にその存在が大きくなりつつある。