よし、覚悟を決めた
こうして、二人の交際が始まったのである。
それから二年間、順調に交際を続けていた。その間、母親と妹を千葉に呼び寄せて、ちょうど班長になって給料も上がった。社会人として、それなりに暮らすことができるようになった。そう考えたときに、無性に家を建てたくなった。自分の持ち家があってこそ男は一人前、などとも思った。
ある日、彼女に相談をした。
「おれ、家を建てようと思うんだけど、組合からお金を借りても百万円くらい足りないんだよね」
「ふーん、私が出してもいいよ」
彼女は五人きょうだいの末っ子。父親は彼女が生まれてまもなく出征し、満州で亡くなったという。父親の顔を知らずに育ったが、佐倉の農家で母親やきょうだいに囲まれて大事に育てられてきたのだろう。
おっとりとした性格は、きっと家族から愛され、かわいがられてきたからこその素直さだ。趣味は山歩きで、休日にはよくいろいろな場所に旅行に出かけていたけれど、自宅から通っていたから、しっかり貯金はあるらしい。
しかし、ちょっと待てよ、と私は思った。お金を借りれば、それはやはり結婚か ……。
男なんて勝手なものである。二年間付き合っていても、いざ結婚となると、なかなか決断ができない。やはり覚悟が必要だ。
「二、三日考えさせてくれ」
そう言って、三日考えて結論を出した。
「一緒に家を建てよう。一緒に暮らそう」
私が三十歳、彼女が二十四歳のときである。結婚の良いタイミングと言えばそうである。
緊張しながら、彼女の家にも挨拶に行った。早くに亡くした父親の代わりに、十歳上のお兄さんが厳しい顔で待っていた。実は彼女には、いくつか良い条件の縁談が持ち上がっていたらしい。たぶん地元の人だったのだろう。
「九州の男か、そんな男はお断りだ!」
【続きを読む】九州男児の意地を見せてやる! 意気込んだ私は、睨みつけてくる彼女の兄に…
<阿南 攻『波乱万丈、どぎゃん苦にも負けんばい』(幻冬舎メディアコンサルティング)より抜粋>
【あなたの結婚エピソードを聞かせてください】
ゴールドライフオンラインでは、読者の皆さまから人生のさまざまな場面を綴った体験談をお寄せいただいています。
今回募集するのは、「結婚エピソード」です。
お寄せいただいた体験談は、ゴールドライフオンラインにて記事として掲載させていただく場合がございます。
<応募方法>
・こちらのメールアドレス(glo_henshu@gentosha.co.jp)まで、以下をご記載のうえお送りください。
お名前、年齢(年代でも構いません)、性別、ご連絡先(メールアドレス)、体験談のジャンル、体験談本文(文字数300字程度~)、掲載時の表記希望(匿名をご希望の場合はイニシャルあるいはペンネームをご記載ください)
※お寄せいただいた体験談をご掲載させて頂く場合は、プライバシー配慮などのために体験談中の場所や固有名詞等の情報の一部を編集部で変更させていただく場合がございます。
病室での『恩人』との出会い、忘れられない結婚式の思い出…【体験談特集】はコチラから
👉『波乱万丈、どぎゃん苦にも負けんばい』連載記事一覧はこちら
ゴールドライフオンラインは、表現者を応援するウェブメディアです。
生身の人間が紡ぐリアルな言葉だからこそ、読者の心を揺さぶる力があると確信しています。
あなたも、"表現者"になってみませんか?
ゴールドライフオンライン編集部:glo_henshu@gentosha.co.jp