三人の思い出

妻とは40代で離婚して家を出た。どちらかが不義理をしたわけでもなく、最後は互いの価値観の違いを認めて結論を出した。

親の都合で辛い経験をさせてしまった以上、一人娘にはできるだけ嫌な思いをさせたくない。私は彼女が将来必要な資金を稼ぐために日々働くことを生きがいにした。

通勤の都合もあって数駅ほどの場所に家を借りたので、週末は本人の気持ちを聞いた上で娘を遊びに連れ出した。

小学校のうちは土日のどちらかはどこに行きたい、あそこに行きたいというので二人で出かけた。子どもの記念日や学校行事の際には、元妻も同行してくれて三人で出かけたりもした。

中学生になると、友だちとの時間、勉強や自分だけの時間も増えてきた。こうなれば男女を問わず、父親の役割は限られる。

人生には進学、就職、その後も何かと迷うことは出てくるが、その際に信頼できる相談相手の一人としていられるかどうか。ほかには先立つものを用意してあげるくらいしか出番はない。会う機会も時間も少なくなったが、離れて見守るしかないと自分に言い聞かせた。

週末は午前中にランニングをして、午後はベランダに出て、椅子に座ってビールを飲んだ。河川敷の公園でボールを追う子どもたちの声を子守歌にしてまどろむのが定番になった。雨が降ると走るのは厳しいし、河川敷にも人影はない。

一日中カーテンも開けぬままベッドの中で過ごす日もあった。あっという間に一週間が過ぎ、ひと月が過ぎ、一年が過ぎていった。そして気が付くと、こんな歳になっていた。