対するゼウスは、どう答えようか話そうか暫く考えている。尋ねられた事が単純だったからこそ、言う言葉が考え辛いのだろう。

「儂は、クレタの国の大王として、クレタ島と周辺の島々を治めていた。統治の目的は、人々が此の国で生きてきて良かったと思えるようにする事だ。だけど思いもよらぬ事が起きたり、思いどおりに出来ない事もある」

「其れ、どんな事が?」

義継としては、色々と興味が増す。

「クレタの国は海上交易で栄えた国だ。それ故、他国との交易による摩擦もある。そんな時、其の国との通商における外交交渉に臨む事になる。此れには可なり苦労した。

其の大変さは、今でも忘れ難い。其の他には、作物の出来不出来の悩みや地震の被害への対応、漁民達の漁場を巡る争い等、其れらの解決に悩まされた事、たびたびだ。

あ……、そうだ。臣下との関係や臣下同士の確執もあったな。そうして儂は心労で体が変になり、最後は食べ物が喉を通らなくなって命を終えてしまった」

「そんな、王様って、大変ですか?」

「国の責任を、一身に背負わなければならんからな。今では此の天界に生まれ変わって安らかに暮らしているが、此処は生きるには刺激が乏しい。いつまで、此の世界で存在してるやら」

「もしかして、地上で生きていた時の方がと思う事は?」

「それはあるな。しかし地上の人達は儂を神と見、此の世界を神の世界として見ている。神として祭り上げる程、特別なのか? 自分が特別に優れているとは思えない」

「祭り上げる方としては、特別と思っていたのではないでしょうか?」

「そう思われても、自分を省みればどうだろうかと疑問に感じる。権力者として行ってしまった事が、後にははたしてと思う場合もある」

「もしかして、過去の行いで?」

「其の事は話し辛い」

ゼウスは暫くだんまりを続ける。義継の目には、ゼウスには話そうとしても話し辛い事があるように見えた。其れも話すには余りにも後味の悪い事なのではと感じられた。

ふと、ゼウスとヘラに目を向けると、着ている物が変わってきている。古代ギリシャの衣装から古代クレタの衣装へと。

ギリシャの衣装は体に一枚布を付けた感じだが、クレタの衣装は上の半袖の服も下のスカート状の物もちゃんと縫製された衣装だ。女性の方は胸を丸出しにするが、今のヘラは丸出しにしていない。其の場合もあるようだ。

 

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