【前回の記事を読む】「100歳まで生きていてほしかった」夫に97歳で先立たれ、おひとりさまに。悲しみは大きいけれど唯一の救いは…

第Ⅰ部

第2章 元気な入居者の暮らしぶり

6 ホームでの人付き合い

男性は「高倉健」型?

男性は、出会いの場は少なくても、ないわけではないのに、友達があまりできないのは男性特有の理由があるのかもと考えていたら、「男は黙って」という美学があることに到達しました。今は亡き俳優・高倉健さんの魅力は、まさにこの一点に尽きます。

実物の高倉健さんは寡黙ではなく、ごくふつうにしゃべる人だったらしいのですが、演技で「男らしさ」を表現しようとしたら、「男は黙って」型となったのではないでしょうか。世の男性はこの美学を体得して、男らしく、かっこよく生きようとしてきたのかもしれません。

だから、他人とは無駄なおしゃべりはしない、やたらにたむろすることもない、安易に友達になろうともしないのです。女性の私も、寡黙な男性のほうが好きです。あけっぴろげよりもベールに包まれて謎めいているほうが、人の心を惹き付けるのではないでしょうか。男性の寡黙は欠点にもなり、美点にもなるのです。美点が生かせれば友人はできます。

ときには「老いらくの恋」も生まれる

男性と女性のいるところではラブロマンスが生まれても不思議ではありません。

このホームでも恋愛している男女はいます。朝、食事前にいっしょに散歩にいくくらいは、恋人同士でなくてもするでしょう。しかし、居室に出入りするようになると、ふつうの関係ではないと疑われるようになります。

あるとき、ダイニングルームを出て、居室に戻ろうとして階段室のドアを開けたら、からだを寄せ合い、手を握り合っている男女の姿が目に入ってきました。私たちに気が付くと、咄嗟にからだと手を離しました。

バツが悪かったのか、「お先にどうぞ」と言って私たちを先にいかせようとしました。私たちは、見たくない場面を見たような後味の悪さを感じながら先にいかせてもらいました。

「あの2人、そういう仲だったのか」と思い始めると、2人の動向が気になり始めました。ダイニングルームではいつも同じテーブルで向き合うか、隣同士で食事をしています。ダイニングルームにいないときは、2人揃っていません。それくらいは気になりませんが、それぞれの部屋に出入りするのを何度も見ると、やはり、気になります。