母親である私の方も、フランス語圏へ来たばかりの頃は、前出の夏季講習の他に、フランス語の語学学校へも通いました。仏文科だったのが、人生初めてここで役立つんだな!と学び直すことを嬉しく感じたのを思い出します。

文法の活用はしっかり覚えていたのですが、ドイツ語とは異なる難しさがありました。

イタリア人やスペイン人のクラスの人たちが流暢に意見を述べる中、文法至上主義の典型的な日本人の私は、上級クラスでも彼らとの差にいらだちを感じていました。そもそもラテン系の言語は互いに単語が似ていて、語順も同じなので単語をただ入れ替えるだけとか、日本人のように全く異なる単語を暗記して組み立てる必要がないのです。

あるフランス語の先生に、自分が読んでいた日本の文庫本を見せたところ、「C’est fou!(クレイジーだ!)」と言われました。

フランス語と比べて、ひらがなや漢字がどれだけ難しい書体なのか、彼女はそこで生まれて初めて知り、驚いてそう発したのです。

別のフランス語のクラスで、テーマは自由で、一人ずつショートスピーチをする授業がありました。そこで私は、日本語の構造やフランス語との違いを説明すると、クラスの皆が興味を持ってくれ、日本人はそれだけ難しい言語を話しているんだね、と言われたことは今でもよく覚えています。