失ったものもある。

・無茶な体力

・無制限の外食

・徹夜耐性

・根拠なき自信

だが、交換としては妥当だと思えた。

午後、散歩コースを延長した。

発症後、最長距離。

途中で引き返せるルートを選ぶのがコツだ。

安全マージンは常に取る。引き返せる安心感が一番大事だ。

川沿いのベンチで座る。

初期にもここに座った。

あの時は、5分で疲れた。

今日は20分座っても平気だった。

回復は、こういう差で分かる。

スマホを見た。闘病ログの総日数。

思っていたより多かった。

そして、思っていたより書いていた。

人は、書くと耐えられる。これは本当だ。

努力が自分で振り返れるから。

夜、家族で食事。

減塩メニュー。もう特別食ではない。

我が家の標準食になった。

「味、慣れたね」

「人間は順応型」

全員うなずいた。

食後、私は言った。

「ありがとう」

「何が?」

「全部」

「広いね」

「正確です」

支えは、具体的に数えきれない。

部屋に戻り、最後のまとめログを書いた。

【急性期:混乱】

【治療期:集中】

【調整期:不安定】

【減量期:揺れ】

【現在:運用】

“完治”とは書かなかった。

運用。この言葉がいちばん合っている。

闘病は終了しない。だが、支配はされなくなる。

中心から周辺へ移る。それでいい。

私は回復の定義を書き換えた。

前は、元に戻ること。

今は、扱えるようになること。

これが現実的で、強い。