味覚も回復していく。
以前より薄味に敏感になった。
これは副産物だ。
夜、少し不安が出た。順調な日ほど出る。
人は、良い流れを疑う。
また崩れるのではないかと考える。
これは防御本能だ。油断した時ほど、何かが起こる。
私は“もし再燃したらリスト”を更新した。
・早期受診
・減量停止
・検査前倒し
・生活負荷を下げる
書くだけで落ち着く。
避難経路が見えると、人は眠れる。
風呂上がり、鏡を見る。
むくみは減った。
だが完全ではない。
回復途中の顔だ。
私はこの言葉が好きになってきた。
スマホの歩数計を見る。
入院時:200歩
退院直後:1,200歩
今:5,800歩
数字は裏切らない。
ゆっくりでも、積み上がる。
寝る前、ふと思った。
普通の生活は、イベントがない。
ドラマも少ない。
だが、それがいい。
闘病で分かる。
何も起きない日は、最高の日だ。
ログに書いた。
【事件なし】【症状なし】【生活あり】
3行で十分だった。
カレンダーに丸。
普通日、クリア。
第十五部:回復の定義を書き換える
朝のルーティンは変わったまま定着した。
起きる。測る。記録する。飲む。
以前は「面倒」だった手順が、今は「確認」になった。
確認は安心を生む。
血圧計の音にも慣れた。
体重計の増減にも慣れた。
尿の色を気にする自分にも慣れた。
人は慣れる。怖いくらい慣れる。
そして慣れたことに気が付かない。
次回更新は7月27日(月)、16時30分の予定です。
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