毎日安定は幻想だ。
文字上は簡単、現実は厳しい。
オンラインで同じ病気の人の記録も読むようになった。
共通点がある。みんな、途中で一度落ちる。
数値ではなく、気持ちが。
回復曲線は右肩上がりでも、メンタル曲線はギザギザだ。
これは自分にとって重要で深刻な発見だった。
退院3週目の外来。
採血結果。
「さらに改善」
主治医が言う。
「下げ止まり見えてきました」
「いい意味で?」
「いい意味で」
こういう日本語は歓迎する。
「ステロイド、少し減らします」
ついに来た。減量フェーズ。
「急に減らさないんですね」
「ゆっくり」
「ブレーキですね」
「そうです」
「急ブレーキだと?」
「体が怒ります」
体は意外と短気だ。
薬が減った日、ちょっとだけ楽だった。
食欲が少し落ち着いた。
イライラも軽い。
たった数ミリグラムで変わる。
薬は繊細で体は正直。自分の心よりわかりやすい。
夜、久しぶりに深く眠れた。
起きた時、頭が静かだった。
いつからこの感覚を忘れていたのだろうか。
私はメモ帳に書いた。
【今日は普通に眠れた。すごい】
健康な時は書かない文章だ。
だが、その翌日。
尿の色が少し濃かった。それだけで不安になる。
人は一度病気をすると、“正常”の定義が変わる。
私は水分を調整し、塩分を見直し、ログを見返した。
そして様子を見ることにした。焦ってもいいことは少ない。
闘病は、体の管理だけじゃない。
すぐに結論を出さない訓練で判断の遅さを身につける訓練でもある。
焦って決めない。慌てて悲観しない。
すぐ絶望しない。これが、だんだんできるようになってきた。
カレンダーにまた丸をつけた。退院から3週間継続中。
派手ではないが、確実に前進している。
今になって、継続の力を1番に感じることにあるとは思わなかった。
次回更新は6月22日(月)、16時30分の予定です。
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