【前回の記事を読む】IgA腎症の薬の副作用で一番辛かったのは、夜ベッドに入っても脳が活動的で眠れないことと…
第七部:自宅という名の管理病棟
診察。
「悪くないです」
主治医が言った。
この言葉は最高ランクだ。
「横ばい改善」
「日本語が難しい」
「悪化してない+少し良い」
「それは良い」
「ステロイド継続」
「やっぱり」
急には減らさない。
腎臓は慎重に扱う。
「運動、少し増やしましょう」
「散歩レベルですか?」
「会話できる強度」
「歌えたらやりすぎ?」
「やりすぎ」
分かりやすい基準だった。
帰り道、私は少し元気だった。
数値が支えてくれる日もある。
だが夜、また落ちた。
理由はない。ただ、落ちる。
私はメモ帳を開いた。
【今日は良かった。でも怖い】
本音だった。
その時、スマホに通知。
スーツ入院の彼からだった。
再入院回避できた
ナイス
減塩まずい
それは仕様
少し笑った。
闘病は孤独に見えるが、ゆるくつながる仲間がいると持つ。
寝る前、血圧を測った。
少し高い。だが許容範囲。
私は思った。
完璧を目指さないことも、継続の技術だ。
合格ラインを越え続ける。それでいい。
カレンダーに丸をつけた。
退院から1週間、生存良好。
ゲームなら、まだチュートリアル後半だ。
第八部:副作用という同居人
退院して2週目、私は気づいた。
病気だけではなく、薬とも同居しているのだと。
ステロイドは効いている。数値は改善傾向。主治医も「反応は良い」と言った。だが効く薬は、だいたい主張が強い。
まず、腹が減る。とにかく減る。食欲が止まらない。
さっき食べたばかりなのに、脳が「まだだ」と言う。
胃ではなく、頭が要求してくる感覚だった。
冷蔵庫の前に立つ回数が増えた。
開ける。見る。閉める。
5分後、また開ける。
母に言われた。
「展示じゃない」
「確認です」
「何の?」
「可能性の」
減塩ヨーグルトを手に取る。
これで満足できる日と、できない日がある。
できない日は、水を飲む。だしを飲む。歯を磨く。散歩に出る。逃げ技を総動員する。
食欲との交渉術が上達していった。
次に来たのは、イライラだった。