【前回の記事を読む】「私の娘に似ている」呆然としている少女に王が名前を聞いたところ、まさか、そんなことが――
初めての国
(ありがとうの魔法―砂時計の中の唄姫 続き)
消(き)えたお姫様
この国のお姫様は、三年(さんねん)前に行方(ゆくえ)知れずになっていたのです。三年前のその日は、お姫様のお誕生日(たんじょうび)でした。
お姫様は、十三歳(じゅうさんさい)になったその日の夜(よる)に、忽然(こつぜん)と姿を消(け)したのです。
それから三年間というもの、王様も国民も、お姫様を探し続けました。しかし、お姫様を見つけられませんでした。
そのお姫様が、突然この国に現れたのです。しかも、三年前とまったく同じ姿形(すがたかたち)で。
本当ならばレティシア姫は、今はもう十六(じゅうろく)歳になっています。でも目の前のレティは、十六歳というよりは、十二、三歳の女の子です。三年も経っているのに、少(すこ)しも大きくなっていないのはおかしな話(はなし)でした。
「そなたは、歌を唄って旅をしているそうだが、今、唄ってはくれぬか」「はい、わかりました」
レティは、王様たちの前で、自分が一番(いちばん)好きな歌を唄いました。その歌を聴(き)いていた王妃様が、急に立ち上がって、こう言いました。
「この子は私たちの娘です!」
そして、王妃様はレティに近づくと、レティを抱(だ)きしめたのです。レティはとても驚きました。
「あなたが唄ったのは、この国の子守歌(こもりうた)です。私が娘に、よく唄ってあげていた歌なのです」
「え……」
王様も二人に近寄り、レティの肩(かた)に手をのせました。
「誠(まこと)にそなたは、我らの娘レティシアだ」
「お帰りなさい、愛(いと)しいレティ」
王妃様はしばらくの間、レティを抱きしめて、たくさんたくさん泣いていました。