夜深は桜歌の背を見据え、少し考えてから同調した。
「まあ、ルックスもスタイルも間違いなくいいな」
内面はまだよくわからないが、外見に関しては涼がはしゃぐのも頷ける。
「だよなあ、制服でわかりにくいけど華奢なのに胸も結構あると見た」
「お前そんなとこばっか見てんのな、下心の化身め」
「バカ結崎、バカバカ」
断固否定するように、涼は人差し指を夜深の胸に突き立てて指摘した。
「美人とはお近づきになるに越したことはないんだぜ、大抵その友達もレベル高いし」
全然否定の言葉ではなかった。ただの浮ついた持論だった。
夜深が呆れていると、前方を歩いていた桜歌がコホンと空咳を打つ。
「ね、ねえ……えーと、どうして結崎くんは麻雀部の見学に来てくれなかったの?」
ちらりと向けられた横顔は頰が薄い朱に染まっていて、足取りも若干ぎこちなかった。
夜深は最初から気づいていたが、涼との会話が聞こえていたようで、とうとう気恥ずかしさに耐え兼ねて適当な話題を振ってきたようだ。
ちょっとした悪戯のつもりで会話を広げたのだが、そのせいで答え難(にく)い質問が飛んできてしまった。余計な真似をしなければよかったと、夜深は理不尽に涼を恨む。
「まあ、入部するならいっそスポーツにしようかなって思ってたんで」
健全な競技に没頭してみたい。理由は本当にそれだけだった。
ただあの日の夜、桜歌に期待の眼差しを向けられていた夜深からすれば、彼女の気持ちは嬉しい反面でその気持ちを裏切る回答でもあったため、余計な期待をさせてしまった罪悪感から心境は複雑であった。
妙な間が空く。
がっかりさせてしまったかと、寂しげな表情が頭に浮かび唇をぎゅっと結ぶ。
だが、返ってきたのは予想外の明るい声だった。
「良かったー、だったらもう麻雀部で決まりだね!」
「はい?」
意味を理解し兼ねて、夜深は間抜けな声を漏らした。
「だって麻雀はスポーツだもん!」
「……麻雀が、スポーツ?」
やっぱり意味が理解できず、問い返す。
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