【前回の記事を読む】「ねぇ、知ってる? この学校、麻雀部があるって。」「しかもめちゃくちゃ可愛い先輩が、たった一人で…」

一本場 風変りな麻雀部

そんなわけで帰り支度を済ませ、夜深と涼は共に教室を出た。

「やっぱガチのとこはキツそうだし、初心者でも歓迎してそうなとこ巡ってみるか」

「それはいいんだけどさ、なんでお前まで……てか、部活は?」

「大丈夫だって月峰のサッカー部はユルいから」

ユルければ全て許されるみたいな主張だったが、実際サボってもお咎めはないらしい。

それに夜深を気遣っての行動であるのも伝わっていたので拒む気にはなれなかった。

涼はリュックのチャックを開き、立ったまま器用にガサゴソと中を探る。

 

手早くA4サイズの数十枚もの用紙の束を「じゃーん!」と、取り出した。

「まさかそれ全部、部活勧誘のビラか?」

「そそ。結崎は勧誘を嫌って裏門から登校してたから、もらってなかったよな」

月曜日の入学式の翌日から金曜日である今朝までが部活勧誘期間だった。登下校の時間帯は校門から昇降口までを先輩達がパレードの観客のように列を成して、部活勧誘を行っていた。

ビラ配りは当然で、一度捕まれば街中のアンケート調査が可愛く思えるくらい強引な、新入生を引き止めての一方的な会話が開始されるのである。

「巷では月峰高校の風物詩とまで言われてる最早イベントの一つなのに、もったいねー」

「火曜に剣道部に拉致られかけて、必死で裏門に逃げた俺には耐えられんイベントだね」

部活に興味はあるが、先輩達に例の如く積極的に勧誘されると、その圧倒的熱量に流されて意志とは無関係に入部しそうになってしまうのだ。

「むしろ早々にサッカー部に入部した笹野がなんでビラもらってるわけ?」

「なんか面白そうな部活ないかなと思ってさ、話してみると割と楽しかったぜ」

「あれが……楽しい?」

コミュ力の権化みたいな奴だな、と夜深は恐れ慄(おのの)く。

「それで、なんか面白そうな部活はあった?」

「もち。月峰ってさ、たとえ人数が一人からでも部として簡単に承認されるじゃん?」

「月峰の理念に『優秀な部活動にこそ価値あり』とかいう謳い文句があるもんな」

「そそ。それを実現させるために活動計画書と活動報告書を生徒会に提出して、その成果分のポイントをもらうんだけど、それ次第で部の命運も決まるっていう面倒で怖いやつ」

「部活動加点式制度だっけ?」

部活動加点式制度では少々堅苦しいので生徒の間ではポイント制で通っているその制度は、部の義務として部員の代表者が月末に活動をまとめた報告書と、翌月の活動プランを立てた計画書を生徒会に提出するというものだ。

その活動内容を生徒会が精査し、算出したポイントを各部に与える、という一風変わった制度である。

「ああ。ポイント制のおかげか、面白そうかつマイナーな部活がいくつもあったぞ」

「月峰の部活が盛んで強豪が多いのって、この制度が影響してるのは間違いないよなぁ」

一定のポイントを稼げれば部員一人でも部は存続できる上に、ポイント次第では部室も得られ、部費にも大きく関わってくる。ただ逆に言うと、成績を収めることが叶わずポイントを稼ぐことのできなかった部活は慈悲もなく廃部になるということでもある。

と、ここで一つの疑問が生まれる。

「そういや、なんでサッカー部は潰れてないの? 存続どころか部室まであるし、一応グラウンドの使用権利もあるんだよな?」