【前回の記事を読む】強引で一方的な、部活勧誘…「剣道部に拉致られかけて、必死で裏門に逃げた」生徒も…
一本場 風変りな麻雀部
「ははは、サッカー部員には耳の痛い話だな……って、うをっ!」
顔を上げてようやく誰と話していたのかに気づいた涼が、のけ反るようにして驚いた。
数秒前に似たような反応をした夜深も、聞き覚えのあるその声の主を凝視している。
「えへへ、どうもー、麻雀部です」
突如現れ、おどけた表情と声音で挨拶してきた女子生徒を改めて見やる。
セミロングのほんのりと桃色がかった黒髪を両側の肩口で纏(まと)め、鼻孔をくすぐるフローラルな香りを漂わせた、身長は夜深の目線ほどの先輩女子生徒。
それは入学前の三月下旬の夜に、月峰高校の校門で出会ったあの人物だった。
「ようやく見つけたよ、結崎くん」
ニコッと人差し指を向けられ、夜深は「え」と声を漏らす。
「先生にクラス聞き回って、手間かかったんだから」
名乗った覚えはあるのでそれはいいとして、なぜ自分を捜していたのか。
理由は一つしか思い浮かばなかった。
「いつまで経っても麻雀部の見学に来ないし、勧誘期間中も現れないし」
やっぱりか、と夜深は少し複雑な気持ちに駆られる。
「何々、お前の知り合いなの?」
堪らずといった様子で涼が耳打ちをする。夜深は首を捻った。
「知り合い、なのか?」
「なんで俺に聞くんだよ」
「えぇーっ、それはちょっと酷くない!?」
ショックを受けたのか、ガーンと傷ついたような表情を浮かべる。