唯井はこれまでの話の流れから見当をつけ、「ここで意識が生まれた?」

「そのとおりね」と、さらに続けて

「一人二役の意識のうち、クオリアがこのとき不完全ながら生まれたんだ。少なくとも今のわたしには、そう考えない理由はないね」

すこし強い口調で断言した。

しかし「ダメなんだ」とかぶりを振り、おおいに不満そうに

「世間一般的には『文化の爆発』の原因について、そうは考えられてないね。偉い学者や先生たちは〝遺伝子の突然変異〟で知能が飛躍的に進化を遂げたとか、〝環境の激変〟に適応し知能が進化したなどと主張する。どれも陳腐な代わりに間違いとは言えないだけね」

牧師のように穏やかなJJにしては珍しく辛辣で手厳しい。

「〝遺伝子の突然変異〟も〝環境の激変〟も、この二百万年間に何度も発生したはずなのにね。ごく自然に考えるなら、知能レベルではなくもっと大きな変革でないと、モジュールの破壊すなわち『文化の爆発』は起こらないでしょ」

本来この視点に立てば、クオリアは変革の有力な候補であり、どうして生まれ、具体的にどのようにモジュールを壊し爆発をさせたのか、についてもっと研究され議論されてしかるべきだという。

「じつは世の中の多くの考古学者や人類学者たちは、この意識にはふれたがらないね。まるで部屋の中の象を見なかったかのように」

JJはほかの学者や周辺の世界と、これまで距離を置いてきたのだろうか。

「ではわたしの説はいったん措くとしてね、『文化の爆発』の前後で彼らにどんな変化が起こったのか。

じつは出土した人工物を比べてみると、それを推測するのは決して難しくはない。カギは容易にみつかるね」

試し読み連載は今回で最終回です。ご愛読ありがとうございました。

 

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