【前回の記事を読む】テレビ番組で少女が聞かれた無茶振りな質問…「初めてデートをしたのは何歳の時ですか?」、「相手は?」
貴女の物語 その続き
そして彼はその夜、不思議な夢を見た。
コンサート会場の最前席中央に座っていた。一度もコンサート会場などに行ったこともないのに、二階席、三階席に至るまでやたらと細かいディテールの施されたリアルな大劇場だった。
スポットライトが中央を照らした。さっきテレビで見た青いワンピースの少女が立っていた。彼女はふいに自分に向かって突然訴えかけてきた。
「お願い、私を探して!」
悠真には全く意味がわからなかった。それよりもその時になって、とんでもない異変に気づいた。自分が背広にネクタイ姿の20代の青年になっていたのだ。
次の瞬間、少女は瞬間移動したかのようにすぐ目の前に現れた。近くで見るとその度肝を抜く可愛らしさはもうこの世のものとは思えなかった。
「待ってるわ!」
少女はそう囁くと悠真に抱きついてきた。彼のほっぺたに彼女の唇が激しく押し当てられた。悠真は無意識にのけ反った。そしてベッドから転げ落ちた。
「痛て」
そこは見慣れた自分の部屋だった。悠真はすぐ部屋を飛び出して洗面所の電気をつけて鏡を見た。そこには12歳の顔を赤らめた少年が立っていた。
いつもの自分だった。さっきキスをされた左頰を鏡に近づけたが、何の痕跡も残っていない。
あれは何だったのか。そんな不思議な夢を見たせいで、その夜はなかなか寝つけなかった。
それは2024年のクリスマスも近い日の不思議な出来事だった。そして、彼はその日から幻を追いかける運命の階段を上り始めた。
しかしその階段がどこに向かっているのか、彼はまだ知らなかった。