「ちょっと待って! やめろよ!」
生出は本気で石井を止めにかかる。
「ガンピ紙を取ってみないと、中でリブがどれくらい壊れているかわからないだろ? 紙はあとで貼り直せばいい」
石井の説明を聞いて、生出はやっとおさまった。
石井は飛行機教室の子供たちに修理の大切さを必ず教える。
「材料から自分で作った飛行機はね、ぶつけて壊しても自分で修理できるよ」
石井にとってストークは、自分で設計して材料から作った飛行機だ。壊れたところがあれば自分で直せる。折れたリブは新しいリブと交換し、ガンピ紙は貼り直せばよい。私のような恐れは微塵もない。石井の勢いならストークを新品同様に作り変えてしまいそうだ。
しかし、この日の午後、国立科学博物館産業技術史資料情報センター長鈴木一義との話し合いで修復の趣旨と方針が出た。どんなに石井に能力と希望があっても、博物館の資料となったストークは、式年遷宮の伊勢神宮のように新品同様に直すことはできない。破損箇所は修理するが、壊れていないオリジナルな部分は古く傷んできても、むやみに新品にしたりはしない。
オリジナルは歴史として、残すことが博物館の大切な役目なのである。ただし今回ストークの修復では、主翼の後半のガンピ紙は破損していないところまで総貼り替えに決まった。
「後半のガンピ紙は、石井さんたちが貼ったオリジナルなのに、なぜ貼り替えるの?」
私は先ほどまで掃除をしていた、ストークの翼の古いガンピ紙が本物と思い込んでいた。
「これは僕たちが貼ったガンピ紙じゃない!」
語気強く石井が即答した。
「とても古そうだから、石井さんたちが貼ったガンピ紙に見えました」
「違うよ! 僕らは、こんな貼り方はしないよ! 見てよ、ここ!」
試し読み連載は今回で最終回です。ご愛読ありがとうございました。
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