石井が不思議そうに尋ねる。

「ダンボール箱で本棚を作るのよ! このままだと、仕事にならないでしょ!」

無料で貰えるスーパーマーケットの廃品ダンボール箱で即席本棚を作り、床に平置きされていた物をすべてそれに収め、殿方たちの健康面と修復作業の能率を上げるために私は宣言した。

「今後、皆さんの食事は三食とも私が作ります。外食は時間の無駄だし、体に悪いのでやめましょう。皆さんのL5を作業場に、私のL6を食堂にします」

こうして修復メンバーのためのL6食堂が始まった。

十四章 層流翼とガンピ紙の貼り方

「こんな紙、取ってしまえばいいんだよ!」

修復九日目、二〇二一年八月二十五日午前中、新調した治具に載せ、空中に浮かせた主翼は作業しやすく、どこが破損しているかも見つけやすい。私と生出は、破損箇所の洗い出しを兼ねて、翼の汚れ落としを始めた。翼の汚れは、主にホコリが原因だ。仏像の煤払いをするように化学雑巾でそっと撫でながらホコリを落とす。

私にとってストークは、国立科学博物館に入館した国の宝で、恐れ多い存在だ。うっかり手が滑って翼のガンピ紙を破りでもしたら、日本人として申し訳ない。化学雑巾を持つ手を慎重に動かし、恐る恐る翼の掃除をしていたら、石井がやってきて、リブが壊れて翼に穴があいた部分のガンピ紙を破り始めた。

「こんな紙、取ってしまえばいいんだよ!」

「うわ! 何をする!」

驚いて血相を変えた生出が石井を制する。

生出の制止にひるまず、石井はまだガンピ紙をはがそうとする。