【前回記事を読む】「中に入って見ていいよ。飛行機、好きなんだろう?」…大学の新入生が格納庫の窓から飛行機を覗き見していると…

十三章 治具とL6食堂

二〇二一年八月十七日から始まって六日目、ようやく完成した治具に翼を載せて、空中にリブを浮かせたまま、修復作業ができるようになったところへ、私はやってきた。

新航空博物館の片隅で、白木の色が鮮やかな治具とくすんだ白色のストークの翼が対照的だった。『ガンピの翼ストーク』を書くために、何度も何度も白黒写真を見たことはあるが、実物を見るのは初めてである。

百年先しか展示の可能性はないと告げられ、生きて見ることは叶わないとあきらめていただけに、感動もひとしおだ。ひたひたと熱いものが胸の奥から湧き起こる。じーっと見入っていると、石井の声で我に返った。

「大江さん、ロッジに案内します」

私が泊まるのはL6だが、石井、生出、中禮が宿泊しているL5に先に案内された。L5の入り口ドアを開け、室内に入った途端、先ほどまでの感動は吹き飛び、現実にかえった。

「何これ! 何故こんなに散らかっているのよ!」

L5のリビングの床は足の踏み場がないほど資料や材料や工具が床に直置きされている。

「だって、本棚を貸してくれるっていうことだったけど、本棚が来ないんだ」

バツが悪そうに石井が言い訳する。

「それに何、この臭い! どうしてゴミをこんなに溜めているのよ!」

ロッジは冷房が効いているが、殿方たちが食べた弁当の容器に残ったタレや汁が腐敗して悪臭を出していた。

「ゴミは水曜日と金曜日しか、集めに来てくれないんですよ」

今度は生出が言い訳する。

「わかりました! すぐにスーパーに行って、ダンボール箱を集めましょう!」

気を取り直して私が言う。

「え? ダンボール箱で何するの?」