社会に向けた情報発信

社会に向けた発信として私が考えた大きな手段として、まずは書籍の出版でした。前述のように、私の経験がこれから脳卒中を発症する方々やその支援者、発症リスクを抱えた人々、当事者の友人知人に役立つのであれば読んでいただきたいという思いで2冊の書籍を2年たて続けに出版(1)(2)しました。

最初の書籍は、多分に主観に流れがちな当事者本人の筆致のバランスを取り客観性を向上させるために、私の回復に尽力してくれた医師・看護師・リハセラピスト他に依頼して医療者側視点からその時点での私の状態と各人の対応を客観的に書いてもらい、

それに対して私からその時点の自分の状況や思いを補足的にコメントする形式で一貫させ、執筆対象期間は発症から大学退職までとし、医学書専門社から出版(1)しました。

STとして実感した発話の困難をはじめとした高次脳機能障害と身体機能障害の主観的経験を中心に据え、これらがリハビリ専門職のセラピストや関係者が読んで参考にできるような構成にしました。

また、拙著第2弾は当事者・支援者に向けて医学用語を多用した前作よりわかりやすい表現を用い、敬意を払っているキリスト教関係の会社から出版(2)しました。

タイトルになった『まさか、この私が』は、手前味噌ですが、多くの人にとって印象的に響いたのではないかと思います。出版後、「良い本だった」「参考になった」「回復経過が分かった」という読者からの反応がありました。

しかし、私から見ると、これらの読後感は大変ありがたいもののさらに一歩進めた深みがないように感じられてなりませんでした。

多くの一般の方は「脳卒中」や「運動麻痺」、「感覚障害」などその症状を言葉として知ってはいるもののあくまで他人事で、実際にどういう症状か自分がなったらどう感じるかというような自分事として具体的な事柄を深く掘り下げて想像するまでには至っていないように感じたのです。

私はこの「想像すること」を「洞察」と呼んで臨床上極めて大切な態度として臨床家に推奨しています。


(1) 『「話せない」と言えるまで 言語聴覚士を襲った高次脳機能障害』医学書院、2013
(2) 関啓子 『まさか、この私が 脳卒中からの生還』教文館、2014

 

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