イザベラは7歳の時、クリスマスにゴンザーガ家を訪れたきりであった。イザベラには今、目にするマントヴァの全てが清新に、全てが尊いものに見えた。

マントヴァの木も、水も、草も、空気も、そして大地も、イザベラはマントヴァの全てを愛惜せずにはいられない思いで胸がいっぱいになった。

秋の収穫を祝うお祭りだけあって、あちこちに果物や野菜や穀物の袋、葡萄酒の樽などが山積みされていた。

そして、山羊の角の中に花や果物を溢れるほど盛った大小様々な「豊作の角」が随所に飾られていた。

さらにあちこちには色とりどりの柱が立てられ、沢山の小さな旗が澄み切った秋の空にはためいていた。その旗の幾つかには、見覚えのある黄金のライオンと黒い鷲が描かれていた。

聖ジョルジョ祭と同じく、道の両側には無数のテントが建ち並び、鮮やかな色の衣装に身を包んだ人々でどこもごった返していた。

賑やかな音楽が流れてくるのでそちらの方に行ってみると、広場では晴着を着た少年少女たちが豊作を祝って踊っていた。

それが終わると、今度は晴着の子供たちが登場し、昔の農家の歌や糸紡ぎ歌を歌った。イザベラは糸紡ぎ歌の多様さに驚いた。この国では毛織物が重要な産業なのである。

紫や黄緑や様々な色の葡萄の山が随所に見られ、甘酸っぱい香りがあたり一面に漂っていた。フェラーラよりも内陸にあるマントヴァでは既に秋が深く、木々はもう紅葉していた。

イザベラは人混みの中でチェチーリアの姿を見失わない様、懸命について歩いた。そうしながらもイザベラは、あたりにフランチェスコがいないか、気になった。時折り、はっとして振り返ったが、いずれも人違いであった。

チェチーリアと一緒にイザベラは何軒のお店に入ったか、自分でも驚くほどだった。チェチーリアに誘われるままにスパゲッティ、ジェラート、ピッツァ、ジュース、氷水……母が見たらびっくりする様な羽目の外し様であった。

4時過ぎになったので、イザベラはチェチーリアに言った。

「もうそろそろ行かないと、お船が出てしまいますわ」

「あら、貴女、お帰りになるの? 私、これからマダレーナおねえ様に会いに行って、今晩はあちらで泊まるの。貴女もいらっしゃいよ」

「えっ、でも」

「いらっしゃいよ」

「でも、妹が病気なので」

「そう、残念ね。でも、お気が変わったら、すぐいらしてね。待ってるわ」

「有難うございます。皆様によろしく」

チェチーリアの後姿を見送りながら、イザベラは何とも言えない思いがした。

 

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