会えば文学的な話で盛り上がるクーカとマホイの会話を聞いていると、チッケは世界が広がるようで身を乗り出して聞き入っていたものだ。

穏やかなマホイの声にチッケはぬくもりを感じてしばらくは泣き声で話すしかなかった。

クーカは懸命に空間を飛んで実験していた。

「意識だけになった俺って何だろう。誰かの脳の中に侵入できているみたいだけど……」

クーカはこの疑問を解き明かしたくてたまらなかった。

「俺の意識って今どうなってるの? 身体から抜け出て意識だけになったってことは間違いないだろうな」

クーカが知識と想像力をどんなに駆使しても、いつまで経ってもそれ以上のことはわからなかった。

チッケはチッケで考え続けている。

「クーカの意識が素粒子と同じように高速で宇宙の塵やガスや星屑をすり抜けて飛んでいるとしたら、何てカッコいいんだろう! 素粒子の動きはエネルギーの振動や波動を作るらしいから、時計にエネルギーを与えることもできるんだろうな」

チッケはクーカの意識が身体と離れて違うものになっても存在していることを、クーカに直接聞いてみるしかないと思った。

しかし、そんなことどうすればできるのかとまた途方に暮れるのだった。

クーカは数年前に見た映画を思い出した。

「あの映画をチッケに見せなくちゃ」

チッケは時々配信で気になる映画を選んで見ていた。

今回選んだ映画には、飛行機事故で死んでしまった男が恋人のことが心配でたまらず天国に行く前に恋人の所に引き返して、見えない姿のまま彼女の耳元で自分の思いを語るのだが、そうとは想像だにしない恋人は、彼の言ったことを自分の考えだと思ってその通りに行動する、というシーンがある。