その時そばには、「つながる訪問看護」の管理者である三浦WOC認定看護師がいた。

彼女がいれば安心だと伊吹は思った。

三浦とは、血液が止まらない惨状の中を共に経験している。

よかったかどうかはわからないが、伊吹医師だけの時は、バイポーラー止血装置や炭酸ガスレーザーでの止血もしたことがある。

その頃、三浦は病院でWOC認定看護師として、地域に出前WOCとして活躍していた。

今は、三浦看護師が務めてくれるようになり、そのような外科的な小手術の必要はなくなった。下川和子のようなケースでも、止血剤を内服させ、止血促進作用のあるゲル製剤の織布を当てることで、腫瘍からの出血は外科的な小手術をせずともコントロールできるようになった。

伊吹は、三浦の病院時代からの援助(アウトリーチ)の成功を実感し、専門的なナースの存在は病院での外科医との橋渡しとしてとても大事な役割を担うのだと感じていた。

そこで今後の訪問看護の将来として、積極的に看護師の専門的な役割と関与、そして活躍の場を示したいと考えるようになった。

伊吹は三浦看護師を「つながる訪問看護ステーション」の管理者に迎えたいと申し出を行い、3年越しで実現することとなった。

三浦看護師は創部を見ながら、今回も止血促進作用のある織布の提案を行った。

その時、伊吹は病院時代からの彼女との時間が走馬灯のように蘇った。

「僕なら昔使っていたフィブリンのりぐらいしか提案できなかったな。ありがとう」

伊吹はそう言い、三浦看護師の提案を採用することにした。

瞬く間に止血は可能となり、非固着性ガーゼ──ガーゼと傷が癒着しない特殊なガーゼ──を併用することで、訪問看護だけでなく家庭でも創部の処置ができるようになった。

とても下川和子は喜んだ。そして、満足げに言った。「私が一番つらいのは、娘の手を煩わすことです。これで一人でできるようになりました」

さすが気位の高い人の言葉は違うな、と伊吹は思ったが、何も返す言葉はなかった。

体格も維持できており、とても悪液質と言われるがんの末期の体型ではない。

今日は関係性をつなげることが最も大事である。

 

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