だから買うことが前提で入らなければならない売り場の一つでもある。『ルビーの指環』の歌詞から七月の誕生石はルビーと知った。私は惜しくも六月生まれで、誕生石はパール(真珠)である。二十代の若い時にパールの指輪を好んで買う人はそうそういないだろう。

そこで私は誕生石にこだわらずに、指にはめてみて可愛いなぁと思う自分の肌の色に合った宝石を選んで、自分へのご褒美に買って身につけた。

私が選んだ宝石は、アメジスト、アクアマリン、ダイヤモンド、ピンクと黄色のサファイアである。指輪をつける事でテンションが上がり、仕事にも励む事が出来た。

小事が大事とはよく聞くが、小さいものの積み重ねが大きなものを生み出すものである。何事も最初から大きなものが手に入るわけではない。小さなものの中に実は大きなものへの価値を見出す、不思議なチカラが備わっているものである。

男性が愛する女性にプロポーズする時に、ダイヤモンドの指輪をプレゼントするシーンをよく見かける。お給料の三ヶ月分のお値段を想定するとはよく言ったものだが、男性が緊張しながらも、

「貴女を必ず幸せにするから、どうぞ僕と結婚して下さい」

と跪いて左手の薬指にそっと指輪をはめる。このダイヤモンドが貴女を幸せにする事の証ですと。

私は五十路も過ぎて、この歳になってわかった事がある。男性は愛する女性だからこそ指輪、いや、指環をプレゼントするのである。つまり何が言いたいかというと、『ルビーの指環』は本当に愛した女性にプレゼントしたもので、彼女が指環を外して返そうとしたら、

「俺がおまえにあげた指環を返すつもりか? 返すぐらいならば捨ててくれ」

と言い放ち、彼女を追う事もしなかった。それなのに二年経っても彼女の事が忘れられず、いや、まして彼女と一緒にいた頃の事を回想している。それほどまでに愛していた人だからこそ、ルビーの指環をプレゼントしたのである。

この別れて切ない男心があまたの人の心に響き、あれだけのロングヒットになったのであろう。指環と指輪の違いには奥が深い意味がある事を、半世紀以上生きてきてやっとわかった次第である。

その当時はラジカセ(ラジオカセットレコーダー)が主流で、ラジオで流れる歌謡曲のベスト二十をカセットテープに録音した。そしてテープがすり切れるほど何度も何度も聴き直した。あげくの果てにはテープがからまって長く伸びきり、聴く事が出来なくなってしまうのだ。

カセットテープが一つだけしか入らない白いラジカセから、ダビング出来る赤い横長ラジカセになってからは、いつでも録音出来るようにラジオを枕元に置いて聴いていた。その頃が今では懐かしい。あの時はなんか幸せだったなぁと可愛かった自分自身の姿を思い出す。

 

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