今すぐに礼に会ってありがとうと言いたい。あんなに冷たい態度をとっても、あくまで彼は彼なりに公私を分けていたということだ。

(私、バカだったな……なんであんなこと──)

そんな思いが頭をよぎった瞬間、人事部長が重い口を開いた。

「それで、先の話に戻るんだが。会社としても君を評価していたので企画系の部署で管理職をやってもらおうと思っていたのだが、それは現段階では難しい。本件が解決するまでは当分今の部門にいてもらいたい」

(まぁ、そうだよね)

「それと、新しい人が慣れた頃に、吉川君を最初採用された部署に移そうと思っている」

「え……」

当初配属を予定されていた部署がいよいよ人手不足も深刻で、すぐにでもほしいと言われているらしい。結局、元から千春のもとである程度自社になじませ、勉強した頃に当初予定していた部署へ移そうという考えは変わっていなかったようだ。

「もとは別部署で採用されたのだから、構わないだろう。君のほうから打診してもらっていいかな」

「はい。わかりました」

さっきまで礼にすぐに会いたいと思っていたのに、もう暗い気持ちが胸を塞ぐ。千春は重たい気持ちを引きずりながら、自分のオフィスへと戻った。

オフィスに入る前、大きく深呼吸をしてからドアを開けた。そしてすぐ、礼がデスクでパソコンに向かっているのが目に入る。

(こんなに行ってほしくないって思うなんて……。最初から、わかってたことなのに)

礼が来るときはさっさと教育を終わらせて違う部署へ行ってほしいとさえ思っていたのに、今はこんなにも離れがたいと思う。それがどんな感情なのかは、今の千春にはわからないでいた。

次回更新は5月14日(木)、11時の予定です。

 

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