池の中で金魚は大得意でした。自分より美しいものはいないと思っていましたし、どの魚も自分によく思われようとしていると思っていましたから。その証拠に小さな魚を食べてしまう大きな魚だって、その金魚を決して食べようとしないのです。あるときすぐ側に大きな魚がやって来たとき、金魚はたまらなくなって言いました。
「あなたが私によく思われたいと思っていることは、私を食べないことで分かっていますよ。そんなに私は綺麗ですか?」
するとその大きな魚は言いました。
「私があなたを食べないのは、あなたを食べてもちっとも美味しくないからです。表面ばかり飾りたてているものは、中身に少しも味わいがないのです。骨ばかりゴツゴツして、食べるときまって吐き気を催すのです。
それに比べると、土の中のあのドジョウは形こそみにくいが、口の中でやんわり溶けて、それはそれは美味しいのです。私があなたを食べないのはそんなわけですから、私があなたによく思われたいからだなんてとんでもないことです」
でも金魚はそれを本気にしませんでした。心の中で「好きなものに好きと言えないので、そのもどかしさが意地の悪い言葉になって出るんだわ」と思っていました。
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