【前回の記事を読む】仕事をクビになった。これは陰謀なんだ、と妻に話しても信じてもらえない。誤解を解こうにも悪循環が続き、妻は発狂した

第一部

第二章 同行二人

同行二人

父の会社で働いていたとき、給料は銀行振り込みで、私はすべてあなたに任せていた。会社を逐われた後、あなたは継母の教えを受けて金銭はすべて自分の管理下において隠したから、私は手足を縛られたと同じで、ブローカとして顧客との付き合いができなかった。

その辺が商家の息子と勤め人の娘との違いで、金がなければ夫は働けないことがあなたには分からなかった。

しかし、その分夫婦の愛憎から離れ、自分が決めた本当の仕事だと思うものに取り付いてゆくことで、夫婦の絆を回復しようと考えていた。盲目的な愛情から脱したからなのか、愛情とみなされやすい経済的ゆとりが取り払われたからなのか、私の妻子に対する愛情は深まった。

こうして私の仕事人生は思わぬかたちで断ち切られ、家族間の愛憎に苛まれる生活がはじまり、それに堪えて稼ぎながら、いつかあなたに知りえた事実を説明し、誤解を解いてもらうことでしか明るく元気な家庭を回復することはできないと考えるようになった。それは辛く困難な生活だが、人生において成し遂げなければならないと自覚している。

同僚だった社員たちのためになにもできなくなったことは、私には申し訳が立たない。社員や両親にとって会社は一族郎党の自己証明の拠り所だったが、兄夫婦にそれは分からない。わが「家」の会社は兄嫁の実家に乗っ取られたので、わが一族は離散し、自己証明の拠り所を失った。

戦後の復興期に助け合って生きてきた両親とその一族郎党の「家」としての会社は滅んだ。この上は、新たな自己証明のために残された時間を自分の仕事だと信じることに使うしかない。