何だか意地になってきた。今度はピョンピョン跳び跳ねてみた。それでも気づいた者はいない。何故だろう、一層訳が解らなくなった。
頭の中で何かがぐるぐると廻っているように思われ、眩暈にも似た焦燥が訪れた。それで腕を振ってみたり回してみたり、飛んでみたり跳ねてみたり、自身でも訳の解らぬひょっとこ踊りを始めていたのである。
その頃ようやく人々は気がついたらしい。初めは皆呆気に取られていたが、ふと誰かが吹き出した。夢中の骸骨には解らなかったが、その踊りは不気味というよりも滑稽だったのである。
くすくす笑いは拡がり、やがて酔っ払いがげらげらと嗤い出した。女たちもけらけら笑い転げ、通りの向こうに笑いの渦が広がった。
「いいぞう、日本一」
その声でようやく我に返った。骸骨はきょとんとしてしまった。
「いいぞう、もっとやれぇ、止めるなあ」
誰かが野次を飛ばした。骸骨は釣られてひょっとこ踊りを続けた。
何のことはない、見せ物だと思っているのだ。こちらは真剣なのに人々は腹を抱えて笑っているのだ。
喉元に苦い味がこみ上げてきた。骸骨は一際派手に踊ると、ぺこりと頭を下げて物陰に消えた。沿道から大歓声が沸き起こった。
再び現われてぴょこんと跳び上がると、またぺこりと頭を下げた。するともう一度大歓声と拍手が沸き起こった。だがもう骸骨は現われなかった。二三の人が暗がりを見透かしていたが、もうそこに姿はなかったのである。
ようやく一つのことが解った。奇異なものを目にした時、人は怖がるか嗤いものにするか二つに一つなのだ。だが東京へ出て来たのはそんなことを知るためだったのだろうか。
嗤いものになるために、わざわざこんな所まで来たのだろうか。物陰で衣服を着けると、骸骨は別の通りへトボトボと歩いていった。そしてもう決して人前では本当の姿を晒すまいと心に誓ったのである。
次回更新は4月21日(火)、8時の予定です。
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「お客さんどちらまで?」「海…」どこでもいい。東京を離れたかった。タクシーは走り去り、独りぽっちになった。その瞬間-!?
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