暫しの沈黙が訪れた。先に口を開いたのはやはり渋谷医師の方だった。
「どうも君は動作がぎこちないというか、口調が固いねえ」
「ハア、長年立チ詰メダッタモノデスカラ‥‥」
そう言いながらも口調の硬さは変わらない。
こうして素面で骸骨と向き合うのは格別に奇妙なもので、渋谷医師は感慨深そうに相手を眺めていた。
すると妙なことに気がついた。この骸骨を男だと決めつけていたが、果たして本当なのか知らん。無論男女によって骨格は異なるものであるし、目の前の骸骨には男の骨っぽさみたいなものが感じられた。
それで念のため不躾ながら、ちらと股間に目を遣ってみたりしたのだが、無論そんなことで判定がつくはずもない。
「ねえ君、君はやはりその、何というか、男なんだろうね?」
渋谷医師はついそんなこと口走ってしまった。
「はあ、小生デスカ? 考エタコトモアリマセンガ‥‥フム」
何だか薮蛇だった。二人はあらぬ方を睨みつけて唸り始めた。そしてやや暫らくそうしていたのだが、決着が着きそうもないので彼の見立てを踏襲することにした。二人は意味もなく握手を交わした。
「ところで君、きちんと目は‥‥見えているのかね? 私にはそれが不思議でねえ」
またしても変テコな問いかけをした。この調子ではいつになったら本題に入れるのやら見当もつかなかった。
「ハア、ソウデスネエ、ヨクハ判リマセンガ‥‥心デ感ジルトデモ言ウノデショウカ」
その点に関しては当の本人にも自信がないらしい。
だが渋谷医師は別のことを考えているようだった。ポケットをごそごそいわせたかと思うと、少し照れたような笑いを浮かべて中のものを取り出したのである。
「ねえ君、よかったら使ってみてくれないか」
それは硝子製の目玉だった。彼の手のひらに一つずつ、まるで宝物のような輝きを放って目玉が載っていたのである。
次回更新は4月13日(月)、8時の予定です。
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先生と骸骨、二人だけの会話をひそかに盗み聞きする男の姿が… 男は顔を歪め、姿を消した
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