深夜1時。
まだ明日の派遣先が5人分、埋まっていない。
登録スタッフに電話をかけても誰も出ない。無理もない。深夜1時だ。
「桐谷さん……一斉メール、発射してもいいですか?」内勤スタッフが疲れ果てた声で尋ねた。
「ああ、お願い」
最後の手段だった。
「明日、4時間でマックス6000円の軽作業あり!」1万人の登録スタッフに一斉メールを発射する。
“マックス”の文字が肝だ。本当は「4000円~6000円」だとしても、そこは夢を見せる。
深夜1時という時間帯だが、メールを見た1人から電話がかかってきた。
1人確保して、残りは4人。
「埋められなかった4人分……明日、僕からお客さんに謝罪の電話を入れるよ」
桐谷がそう言うと、内勤メンバーは深々と頭を下げて帰っていった。結局、業務が終了したのは深夜2時。そして4時間後の朝6時。また業務が再開される。
桐谷は自宅に戻り、シャワーを浴びて2時間だけ仮眠を取り、7時にまたワゴン車を走らせる。
桐谷にとって一番辛かったのが、毎朝使う高速道路だ。高速道路は一本道で単調。走れば走るほど眠気が襲ってくる。この睡魔との闘いがまさに地獄だった。
何度も目を瞑(つむ)りかけ、そのたびに太ももを血が滲むほどつねる。
(絶対に寝るな……俺が事故ったら、派遣スタッフたちが……)
太ももは、いつも傷だらけだった。
売上が足りない。だからキャパ以上に依頼を受ける。それが埋められず内勤スタッフは疲弊し、仕事の精度が落ちて未達が続く――まさに無間(むげん)地獄。
これが、“ノルマ未達の現実”だった。
次回更新は4月6日(月)、8時の予定です。
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