そしてそれから数時間後、彼は覚醒した。私は目を開けたその男性に話しかけた。
最初は特に反応がなく、開眼した目はトロンとしていた。次に、彼の右手を握って、「右手を握ってごらん」と呼びかけたら、かすかに握り返してきたような気がした。
今度は「足の指を動かしてごらん」と指示したら、左右の足の第4・第5趾がかすかに動くのが見えた。大丈夫だ、麻痺はない。
患者が覚醒したという噂は、ICUから手術室、救急外来に瞬くうちに広がった。手術室からも、救急外来からも看護師が様子を見にICUにやってきた。
「先生、目が覚めて本当によかったですね!」
「心停止が長かったので、目は覚めない可能性が高いと思っていたから。これもみんなが一生懸命に助けてくれたおかげだよ、ありがとう。それに、おにかな蘭ちゃんが器械出しをしてくれて本当に助かったよ」
手術室の看護師はけげんな顔をした。
「先生、いったい、『おにかな蘭ちゃん』って何ですか?」
「実はね、手術室の看護師の蘭ちゃんは心臓手術の器械出しが上手でいつも準備は万全だし、難しい手術もスムーズに進むので、私は心の中で『蘭ちゃんがいれば鬼に金棒』と思っているんだよ。略して『鬼金蘭ちゃん』とひそかに呼んでいるんだよ」
「へえ、そうなんですか! じゃあ、それ本人に伝えておきます」