こういう女子の輪の中にいるのがしんどい。話に乗れていないのにちょっと浮いた状態で居続けるのはリスキーに感じられる。そうかといって、今ここで自分が席を外すと、話題の矛先は自分になるだろうという不安から離脱することもできない。ただ曖昧に微笑んでいると、
「ところで」
加奈が何か重大な話でもするようにひと呼吸おく。
「みんな好きな人いる?」
今までの話と関連性がない唐突な質問だ。戸惑う洋子。そんな洋子を正面から見つめて加奈がはっきり言う。
「私、晃のことが好きなんだ」
話していた女子たちが「えーっ」と声を出す。
「ずっと前から好きなの」
加奈の話し方には恥じらいはなく、どちらかというと威圧的な感じがする。
「そうなんだ」と洋子。
「応援してくれる?」
「もちろんだよ」
友美が口火を切って、みんなも口々に言う。
「洋子は?」
「もちろん。応援するよ」
ああ、そうか、それが言いたくて急に話しかけてきたのか、と納得する。
「約束だよ」
「うん」と頷きつつも、塾が一緒であることを言いそびれてしまった。言った方がいいような気もしたが、言わない方がいいというもう一人の自分の声に迷って
言いそびれた。
教室の中、女子たちはグループごとにお喋りをしている。親し気に話しているけど、男子の話題は要注意だ。
洋子はハーフっていうだけで、女子からは敵視されているように感じていた。
「洋子は美人で羨ましい」という言葉も何か棘を感じる。自意識過剰と言われてしまえばそれまでだけど、実際忘れ物をして隣の男子に借りただけでも、男子の気を引こうとしているなどの陰口が囁かれた。
試し読み連載は今回で最終回です。ご愛読ありがとうございました。
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