〈4〉
「人材派遣の会社に就職が決まったから」
桐谷は地元で建築会社を経営している父に電話した。
「人材派遣?なんだそれ」
「人手が足りない企業に、人を送り込む仕事。父さんの仕事でも、現場で人が足りないときに、どっかに職人を頼むでしょ。その頼む先のこと」
父の仕事に例えたが、いまいちピンときていないようだ。
無理もない。2000年という時代は、“人材派遣”という業界はまだ一般にはほとんど認知されていなかった。
ましてや、桐谷の地元は新潟県の片田舎だ。人材派遣なんて業種を知るわけもない。
「お前には銀行に就職してほしいと思っていたんだがな……」
その言葉を最後に、父との会話は終了した。
東京の大学まで通わせた息子が、得体の知れないベンチャー企業に就職する。父は心配だったに違いない。桐谷は父の残念な気持ちが痛いほど理解できた。
しかし、父の心配とは裏腹に、世間では確実に人材派遣の潮流がやってきていた。
ここで、少しだけ2000年当時の時代背景を振り返る。