大輝は東京から駆けつけた。28歳、背が高く真面目そうな青年だ。

「父さんがこんなに嬉しそうな顔してるの、久しぶりに見ました。よろしくお願いします」

深々と頭を下げられ、よし子は慌てて頭を下げ返した。

(この人が雅彦さんの息子さん。これから家族になる人)

美咲はよそゆきのワンピースを着て、少し照れくさそうにしていた。式の間は神妙な顔をしていたが、食事会になると大輝と何やら話し込んでいた。

「美咲ちゃん、大学どこ志望なの?」と大輝が聞き、美咲が答えるのを見て、よし子は安堵した。この子たちが家族になるのだ。

千鶴がよし子の手を取った。小さくてしわだらけの手。でも力強い。

「よし子さん、雅彦をよろしくね。あの子は不器用だけど、心根はいい子だから」

「はい。お義母さん」

その夜、初めて「夫婦」として同じ部屋で過ごした。雅彦がよし子の髪を梳きながら言った。

「幸せですか」

「幸せです」

「僕もです。こんなに幸せでいいのかなと思うくらい」

よし子は雅彦の胸に頬を寄せた。心臓の音が穏やかに響いている。このまま時が止まればいいと思った。

(ずっとこのままでいたい。ずっと)

けれど人生は、幸せの絶頂にいつまでもいさせてはくれないのだ。そのことをよし子はまだ知らなかった。

次回更新は4月1日(水)、21時の予定です。