花や草木が芽吹き、虫達も動き出す春。私が小学5年生になった頃、同居しているおばあちゃんが、検査入院していた大学病院から帰ってきたの。おばあちゃんが「お寺さんに行きたい」と望んでいたから、母方のおばあちゃんと一緒にお参りに行ったりしたよ。しばらく、今まで通り一緒に過ごして……

夏へと移りゆく6月。お布団で寝ているおばあちゃんが「山が迫ってくる」って、窓から見える山を怖がっていたの。ついに病状が悪化して、自宅近くの病院へ入院。緑色の酸素マスクを着けて眠っているおばあちゃんの姿を、少し離れた所から見ていたのは覚えてる。

そして……、激しい雨風が雨戸に打ち付ける音で全然眠れなかった、7月のあの晩。おばあちゃんは、息を引き取った。次の日家に帰ってきたおばあちゃんは、お化粧をして眠ったように綺麗だったの。自宅で行うお通夜とお葬式。足袋を履かせる時、冷たくて重くて、硬くて……まるで大きな人形みたいで。

翌日の葬儀では、……お母さんが泣いていた。柩の蓋を釘で打って、おばあちゃんを閉じ込めてしまうのが怖かった。おばあちゃんが死んじゃったら……。(おじいちゃんがいないお父さんがひとりぼっちになっちゃう)そう思うと涙が止まらなかった。小学5年生の夏……、身近な人の死を初めて経験したんだ。

年が明けて、年号が昭和から平成へと変わる。小学6年生、誰もいない家の鍵を開けて寂しさを味わい、世話を焼いてくれるおばあちゃんのいない生活。それは、私を少しは大人にしただろうか。

生まれた時から、傍で見守ってくれていたおばあちゃん。その生涯……幸せでしたか? 最期に、身をもって“死”を教えてくれてありがとう。本当に感謝の気持ちでいっぱいです。

――――そして翌年の3月。ぷっくりとした桜の蕾が春の訪れを知らせてくれる中、私は小学校を卒業したんだ。

 

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