「うん、それにしても、穏やかそうで良い国なんだろうね。ホラ、麦(むぎ)があんなに豊(ゆた)かに実(みの)ってる」

「そうね、とても素敵な国だわ」

二人は丘(おか)の上に立って、しばらくの間、美しい風景(ふうけい)を眺(なが)めていました。

そして二人は、国の中心(ちゅうしん)へと歩き出します。

レティがいつものように歌を唄うと、その声に引(ひ)き寄(よ)せられ、人々(ひとびと)が集まり出します。

レティが唄い終わると、大きな拍手(はくしゅ)が起(お)こり、人々からは称賛(しょうさん)の声が上がりました。

皆(みな)がレティの唄声に聞き惚(ほ)れているのは、いつもと同(おな)じなのですが、何かがいつもと違っていました。

人々の中から、時々(ときどき)〝姫様(ひめさま)〟という声が聞こえてくるのです。

いつもとは違う雰囲気(ふんいき)に、アルフレドもレティも、

(何なんだろう)

と、思っていました。

するとアルフレドたちの前に、お城からの使者(ししゃ)が突然(とつぜん)現れて、二人に今からお城に来るようにと伝えたのでした。

断(ことわ)る理由(りゆう)もないので、二人は使者に言われるままに、お城へと向かいました。

お城に着(つ)くと、二人は王様(おうさま)と王妃様(おうひさま)の前へと案内(あんない)されました。

王様はレティを、穴(あな)が空(あ)くほど見つめています。

「そなた、名は何という」

「はい、レティです」

「なんと! レティだと」

王様がそう叫び、その場(ば)にいた人々が騒(さわ)ぎ始めました。

「そなた、レティと申(もう)すか」

「はい」

「いや、まさか。そんなことは……しかし、あまりにも似(に)ている」

レティには何が何だかわかりませんでした。

「そなたは似ているのだ。我(わ)が娘(むすめ)、レティシアに」

 

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