【前回記事を読む】「あの黒柴も気になっていて…」と話すと、店員からの想定外の返事が――「あの柴犬は実は…」
第2章 「J」との暮らし
パピー時代
「J」が我が家に来て1週間ほど経った深夜、物すごいスピードでリビングを走り回っていた「J」は、暴走した挙句にダイニングテーブルの脚に激突した。
「キャインキャイン」と鳴きながらひっくり返ったまま暴れる「J」。
「どうしよう? 骨が折れちゃったかも」
「こんな夜中に診てくれる動物病院なんかないよね?」
私は真っ青になった。
都内に住む妹に電話で聞いてみたところ、偶然にも車で15分くらいのところに24時間診療の動物病院があった。
急いで「J」を連れて行った。
脚は特にケガをしているわけでもなくほっとした。
「ひっくり返ってびっくりしただけでしょう」とのこと。
「それよりも」と、年配のベテラン獣医師の先生はやや厳しい顔をしてこう言われた。
「この犬がどういう犬か、ちゃんとわかって飼いましたか?」
私たちは無言になった。
先生が言いたかったことは「運動量がものすごく多いボーダーコリーを庭もない都心のマンションで飼うなんて、無謀すぎます!」だった。
まったく、先生の言う通りだった。私たちは、ほとんど知識もないままに、庭もバルコニーさえない家で、羊を追うためのシープドッグを飼ってしまったのだった。
どうやら私は、無謀すぎる住宅ローンを背負った挙句、無謀すぎる犬種を家族に迎えてしまったようだ。
「J」が来てから壊されたのは、ソファやテーブルや絨毯だけではなかった。新築マンションの壁にはあっという間に穴が開き、ドア枠には大きな丸い彫刻作品が刻まれた。
こうして新築のマイホームがどんどん破壊されていったにもかかわらず、私たち夫婦は「J」に夢中になっていった。