特に中心となる曲は『タイトゥン・アップ』で、スネークマンショーも加わり、7分超のロングセッションとなっている。
さらに『マルティプライズ』はスカ・ビートの上にベンチャーズのパロディ的ギターフレーズと日本っぽいメロディが交錯し、その上から日本男児たちの、祭りのような部活のような掛け声がリズム良くかぶさる。
『ジ・エンド・オブ・エイジア』のラストフレーズはシンセサイザーで琴や笛など和楽器風の音色のアレンジで東海道五十三次の広重の浮世絵をイメージさせるサウンドのもと、伊武雅刀がしみじみと「あ〜あ、日本は良い国だなあ……」と呟く。
このアルバムがそれまでとは違う特筆すべき大きな点は、それまでファンにとって〈無機的〉だったサウンドが、意識的に徹底して〈有機的〉に制作されている点である。
それまでのYMOのサウンドは決して無機質ではない。
細野も「音楽を作るのはまず人間の感性であり機械ではない。(中略)あくまで音楽は人間がつくるものなのだから」と述べている1。
ではなぜ、ファンはそれまでのYMOの音楽を無機的ととらえていたのか。
それはYMOの3人のパーソナリティを隠してきたからである。
しかし、このアルバムではYMOの人間臭さを隠蔽することなく解放しているのである。
また、多国籍でありながら無国籍というYMOのコンセプトをずらして、日本国籍であることを強調している。
YMOはこのアルバムでまた変貌を遂げたのである。『増殖』はYMOヒット記念のサービスとして当初10万枚限定でプレス予定だったが、予約だけで10万枚をはるかに超え、増盤することになる。
そして発売後はオリコン4週連続1位を獲得する大ヒットとなった。
1――細野晴臣『音楽少年漂流記』
次回更新は4月11日(土)、20時の予定です。
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