さて、『増殖』の内容について検証しよう。
このアルバムはスネークマンショーとのコラボとなっている。
スネークマンショーとは桑原茂一、小林克也、伊武雅刀(当時の名は伊武雅之)の3人からなるコントユニットで、当時桑原はアメリカの雑誌『ローリング・ストーン』日本版の編集をする傍らBIGⅠなどのファッションショーの選曲をやっており、小林はラジオDJ、伊武は役者・声優をしていた。
3人ともお笑い芸人ではない。ラジオ大阪で音楽番組を持ち、曲の合間にシュールで過激なコントを放送していた。
それがやがて〈知る人ぞ知る〉カルト番組として人気になり、全国各地で放送された。
そこではYMOやプラスチックスなど、テクノポップ系のアーティストもゲストに呼ばれ、コントにも参加していた。
アルバムの内容はYMOの曲とスネークマンショーのシュールなコントが交互に並ぶが、曲中にもスネークマンショーが前面に出てきたり、ラストのコントにはYMOの3人も加わる、徹底的に明るいアルバムである。
YMOのお笑い好きは今や誰もが知るところだが、当時はまったくと言っていいほど知られていなかったから、ファンはこのアルバムに相当驚いた。
肝心のサウンドは高橋幸宏のドラムが全面的にビートを刻み、シンセサイザーは心地良く、アルバム1枚がまるで1曲のシングルのようにテンポ良く繋がり、一つのパフォーマンスとなっている。
ピコピコサウンドは抑えられているが、これもテクノポップなのである。
この時代のテクノポップの定義は〈オシャレ〉で〈斬新〉だということであることを証明する傑作となる。