興味本位で聞いたら、さらっととんでもないことを言われ聞き間違いかと思った。聞き返すと西海の口から全く同じ音声が再度流れてきた。聞き直しても、聞き間違いじゃなかった。間違っていてほしかった。

こいつ、待ち時間に盗聴してやがる。

え、なんで。

いや、そんなことは確認するまでもない。

だって西海はデート中の東堂を観察したいがために、彼女を作ってまでデートについてきたんだから。東堂のプライバシーを密かに侵害するために来ているんだから。

そんな明白な理由を聞くのは馬鹿げたことだ。だから、聞くべきなのは、

「どうやって?」

「悪用されるとまずいから教えない」

「現在進行形で悪用しているやつがなんか言ってる」

どうしよう。見逃すことも犯罪になるんだろうか。西海のことをかばうつもりなんてさらさらないのに、犯罪者の仲間入りをしなければならないんだろうか。こいつを突き出したら、私だけでも無罪放免にならないだろうか。

「なんでそんなこと。二人の会話が気になるなら一緒に乗ればよかったのに。並んでればわざわざ盗み聞きしなくても会話を聞けたじゃん」

そのためにダブルデートなんてふざけた企画を立案したくせに。

なんで原点に戻っているんだ。

馬鹿じゃないのか。

捕まりたいのか。

「その話、重要か?」

「私は割と大事なことだと思ってる」

「ちょっと待て。今、いいところだから。三十秒くらい待て」

西海は私を片手で制しながら目を瞑(つむ)り、イヤホンから流れてくる音声に意識を集中させている。どうしよう。こいつの隣にいたくない。関係のある人間だと思われたくない。

苦し紛れにズゴゴゴゴと音を立ててストローでジュースを吸い上げ妨害を試みるが、西海は微動だにしないでイヤホンに耳を傾けているようだったので、恐らく無意味だった。腹が立った。

三十秒と西海は言ったけど、実際のところそのまま数分は動かなかった。いやマジで、なんでこっちに来た?

スマホの時計の下一桁が四回くらい変わってから、ようやく西海がイヤホンを外した。

「もういいの?」

「ああ、二人がロッカーに荷物を預けた。これからジェットコースターに乗るらしいから、とりあえず数分は問題ない」

皮肉を込めて声をかけるが、犯罪行為の余韻に浸っている西海には伝わらなかったらしく効果がないようだ。なるほど。盗み聞きのカギはどうやら東堂の荷物にあるらしい。

「で、なんの話だ?」

「なんでもない。もし捕まることがあっても、私の名前は絶対に出さないでね」

「何をそんなに怒ってるんだ?」