【前回の記事を読む】妻が300万は使った、「お姫さま扱い」するエステ…施術後もセレブ気分で、ワインとつまみに7、8千円使うようになり…
人生を失い、それでも女は這い上がれるか
治美
四郎は帰宅すると入浴して、テレビを見ながらビールを飲み、十二時前には寝てしまう。治美は、十一時にはベッドに入るから、すれ違いである。朝早い四郎は、朝食はシリアルで自分で食べて出かけていく。
四郎が出てから治美が起きるが、愛美の朝食もシリアルなので、自分でできる。すっかり飲むことが中心になっていった治美は、パートの前に缶ビール一本飲むようになっていた。
だから、飲んでいないのは、パートの仕事をしている間、エステの施術を受けている間、そして寝ているときだけである。
土日は愛美の学校が休みで家にいるが、小学三年になっていたので、お昼はお金を渡せば自分でスーパーでお弁当かパンを買ってくる。あとは友達と遊びに行ってしまう。
四郎はといえば、ゴルフの日は朝早く出かけて、飲んで帰ってくる。ゴルフがない日は昼過ぎまで寝ていて、起きてもゴロっとしてテレビを見ている。治美が何をしているのかなど関心がない。
だから、彼女が寝室でワインを飲んでいても気づかないのである。さすがに休日は、酔いながらも一品は何か手作りのものを夕飯に出してはいたという。
「要するに寂しい家族だったのよ。妻が飲んだくれてても気づきもしない。そんなだったから、私がアル中になったって面もあるかもね。夫婦で共通の趣味があるわけでもないし、何か楽しみをみつけようとすれば、自分ひとりだった」。治美は、そうふり返った。
そのうちパートも辞めてしまった。飲んでいたいからである。パートで貯めた貯金にも手を出し始めた。このころになるとエステ通いも止めた。これまた、エステにいるときも飲みたいからである。
正真正銘のアル中生活に入ったわけだ。家族旅行に出るときは、自分用の水筒にワインを入れ、かばんにも数本のワインを忍ばせた。夕飯のときは宿で夫婦して堂々と飲める。
だが、そのうち、さすがに四郎も、治美がいつも酔っていることに気づき始める。たまに早く帰ってくるようにもなった。そして、アル中がバレたのである。
最初は治美はうそをつく。たいして飲んでいないようなことをいうのだ。疑い深くなっている四郎はすぐに見破る。そんなこんなを繰り返して、治美のしでかしてきたことが明々白々となる。
自分の貯金をゼロにした上、愛美の進学費用にと貯めていたお金も半分以上使ってしまっている。すべてエステとお酒に消えたのだ。この現実に、四郎は、ショックのあまり、へなへなと座り込んでしまった。治美は、そんなときでも飲むことしか頭になかった。