厳しくなるのも無理はないかも、と治美は思っていた。だが、やはりストレスはたまる。休みの日のエステ通いが始まったのも、そんなストレスが原因だったかもしれないと治美は回想した。
エステは最初は「お試し」で安い。魅力にハマると次々に高いコースを勧められるし、次の予約もとっておかないと……という気にさせられる。
治美はエステで「お姫さま扱い」された帰りは、なんだかセレブ気分になってしまい、リッチな店でワインを飲むようになった。高級なおつまみと高級なワイン。一回で七、八千円使った。
自分が結婚する前に貯めた貯金があったので、それなら使っていいだろうと考え、ぜいたくを続けたという。週一回か二回、セレブ夫人の気分になる。ワインを飲めば気が大きくなり、家に着くまでの間にあるブティックで高い服も買ってしまう。
次にエステに行くときにそれを着ていくのである。「だけどさ、エステは電車で一つ先の駅の前。いつも行くレストランはエステから歩いて五分くらい。高い服着てたって意味ないじゃない? だけどねぇ、そんときはハマってたからねぇ、気分よくてやめらんなかったのよねぇ」
ドラッグストアで働いている自分、家で家事をしている自分。その姿とは別世界の自分の姿に酔いしれていたのだと思うと治美は話してくれた。
やがて、貯金の残りも寂しくなってきたこともあるし、エステよりお酒の方の魅力が勝るようにもなってきて、エステは安めのコースにして、飲むワインの量が増えていった。
そのころには、家でも昼間飲むようになっていた。パートから帰って、夕方、夕飯を作り始めるまでにワイン一本は軽く空け、一本で済まなくなり、二本飲むようになった。
夕飯は冷凍食品ばかりになった。夫の四郎は夕飯は社食で食べる。残業をして、通勤に一時間半かかるから、帰宅は九時か十時。ビールのおつまみを用意しておいてあげれば文句はいわない。乾き物でも何もいわない人だったから、酔っていても十分できる。
次回更新は3月22日(日)、21時の予定です。
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