圭人のこともそうだ。俺の勝手なヤキモチに、気分の悪い思いをさせたと自分の行動を改める姿勢を見せてくれた。

一番大切な存在を失おうとしていたことに今になって気づくなんて……

「瑠美、大丈夫ならいいんだ、もう連絡はしない。俺も妻がいて子供が生まれる、大切な存在がいる。今更気づくなんて、もう遅いかもしれないが……」

俺は瑠美に背を向けてその場を後にした。俺が沙優の待つマンションに戻ったのは、二週間経ってからだった。沙優は俺を許してくれるだろうか。

俺はこの二週間、仕事も長期休暇を取り、携帯も電源をオフにしていた。まさか沙優が大変なことになっているとは想像もつかなかった。

第十章 思い出せない時間

マンションに戻ったのは、俺がマンションを出て二週間後の夕方だった。部屋に入ると違和感を感じた。まるで誰も住んでいないような空気が漂っていた。

コンシェルジュ高城に事情を聞くため、エレベーターで下に降りた。

「南條様、お帰りなさいませ」

「沙優がいないが、行き先は聞いているか」

「連絡は受けておりませんでしょうか。沙優様は貧血を起こして部屋で倒れて病院へ緊急搬送されました」

えっ、沙優が倒れた。俺はなんて自分勝手な行動を取ったんだ。沙優が妊娠八ヶ月目に入っている妊婦だと、全く頭に入っていなかった。散々注意事項を頭に叩き込んだはずなのに……

「沙優が緊急搬送された病院はどこだ」

「こちらです」

コンシェルジュ高城からメモを受け取り、沙優の運ばれた病院へ向かった。

次回更新は3月20日(金)、22時の予定です。

 

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