母親は暖海で小学校教師をしており、父親は東京の建設会社まで遠距離通勤をしていた。小学校三年のときに両親が実の親でないことを打ち明けられたが、由香里は二人の深い愛を確信していたので、ショックではなかったという。
その両親との間に摩擦が生じるようになったのは、小学校六年ころからだ。由香里の体つきが女性らしくなってきた時期である。父親の視線が妙に気になるようになった。
それは娘を見るというより、女を見る目だったと由香里は回想した。何気なくソファに寝転んで雑誌を読んでいるときに、ふとダイニングの椅子に座った父がジッと自分をみつめていることに気づく。
口元がかすかに微笑んでおり、目はギラギラと輝いていた。由香里はドキッとした。とっさにパンツが見えるほどにまくれ上がったスカートの裾をつかんで伸ばし、太腿を隠す。すると父はハッとしたように視線をそらせる。
中学生になった由香里が夕食後、家事の手伝いとして食器を洗っていると、父が後ろから、「えらいねぇ」といいながら肩を抱き、体をピタッと由香里の体にくっつけることもあったという。
廊下や階段ですれ違いざまに、軽くお尻や胸をさわられることもあった。その行動はすばやく、わざとのようでもあり、無作為に手がふれてしまったといわれればそうともとれる行為だった。いずれも必ず、そこに母はいなかった。
次回更新は3月17日(火)、21時の予定です。
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